会社を辞めて、独立して仕事をしたい。
そう考えたとき、開業の手続きや事業計画、仕事用のパソコンなど、「何を準備すればいいのか」を調べる人は多いと思います。
もちろん、それらも大切です。
ただ、実際に独立し、小さな事業を長く続けてきた私が振り返ると、その前にもっと考えておいた方がいいことがあります。
それは、
「独立すること」ではなく、「独立して、どんな働き方をしたいのか」
ということです。
私は、最初から「経営者になりたい」という強い夢があって独立したわけではありません。
むしろ、最初のきっかけは、会社という組織の中で働き続けることに疲れたことでした。
そこから会社を辞め、資格取得のための時間を作り、独立しました。
独立後は、思うように仕事が取れない時期もありました。
一方、人とのつながりをきっかけに仕事が一気に増えた時期もあります。
長く続けてみて分かったのは、独立すれば自動的に自由になれるわけではない、ということです。
この記事では、これから独立を考えている人に向けて、私自身の経験から「独立する前に一度考えておいた方がいい」と感じていることを書いてみます。
私が会社を辞めた一番の理由は「組織から離れたかった」から
退職するとき、会社には前向きな理由を伝えました。
ただ、本当のところを言えば、一番大きかったのは、
この組織の中で、このままずっと働き続けるのはしんどい
と感じたことです。
私はその会社に12年間勤めていました。
仕事そのものだけでなく、人間関係でもかなり苦労しました。
入社したころからどうしても関係がうまくいかない人がおり、仕事上つらい思いをすることも何度もありました。
周囲が間に入ってくれることもほとんどなく、
「ここで最後まで働くために、そこまで自分を犠牲にしなくてもいいのではないか」
と思うようになりました。
一方で、勤務時代には管理部門を中心に、さまざまな実務経験を積んでいました。
そのころには、
「外に出ても、何とか仕事をしていけるくらいの力は身についているのではないか」
とも思えるようになっていました。
この二つが重なったことが、退職を決める大きなきっかけになりました。
独立というと、
「昔から起業するのが夢だった」
「自分の力を試したかった」
といった前向きな理由の方が聞こえはいいかもしれません。
でも、私は独立のきっかけは、必ずしも格好よくなくてもいいと思っています。
今いる場所から離れたい。
このまま何十年も働き続けるのはしんどい。
そう感じることも、自分の働き方を見直す一つのきっかけです。
ただし、
「会社を辞めたい」と「独立して生活していける」は別の話です。
ここは感情だけで決めず、冷静に考える必要があります。
会社を辞めてから、4か月を資格試験に使った
私は会社員時代から、独立後の仕事につながる資格の勉強をしていました。
ただ、当時はかなり仕事が忙しく、働きながら合格するところまではいきませんでした。
そこで退職後、あえて4か月ほど仕事をしない期間を作りました。
その4か月を資格試験の勉強に集中して使うことにしたのです。
今振り返ると、かなり博打に近い選択だったと思います。
試験ですから、当然、必ず受かる保証はありません。
会社を辞めたからといって、合格しやすくなるわけでもありません。
それでも、まとまった時間を投入することで、独立後の仕事につながる資格を取ることができました。
私は、
「資格を取りたいなら会社を辞めればいい」
と言いたいわけではありません。
家族がいる人もいれば、住宅ローンや教育費を抱えている人もいます。
貯蓄額も違います。
むしろ、多くの人にとっては、会社員のうちにできるだけ準備を進める方が安全でしょう。
ただ、独立を考えるのであれば、
自分が勝負するための時間を、どこで確保するのか
は考えておいた方がいいと思います。
会社員を続けながら準備するのか。
副業から始めるのか。
私のように、退職後に一定期間を準備に使うのか。
正解は一つではありません。
大切なのは、勢いだけで会社を辞めるのではなく、
辞めた後の時間を何に使うのか
まで考えておくことです。
私は「3年間、仕事が少なくても耐えられるか」で考えた
独立する前に、私がかなり慎重に考えたのがお金です。
当時は独身でした。
住宅ローン、光熱費、食費、その他の生活費などを計算すると、ざっくり月20万円くらいあれば生活できると考えていました。
そして、
「仮にお客さんがほとんど付かなくても、3年間は耐えられるようにしてから始めよう」
と考えました。
結果として、独立するときには、3年間は耐えられるだけの預金を持った状態でスタートしました。
事業も自己資金だけで始め、私は融資を受けませんでした。
もちろん、
「独立するなら3年分の生活費を準備すべき」
という意味ではありません。
必要な資金は、その人の家族構成や生活水準、事業内容によって大きく変わります。
店舗を借りたり、大きな設備を購入したりする事業なら、必要なお金もまったく違います。
ただ、一つ言えるのは、
独立直後から予定どおり売上が上がることを前提にしない方がいい
ということです。
仕事がなかなか増えない。
予定していた契約が取れない。
思ったより経費がかかる。
そういうことは普通に起こります。
私の場合、十分な資金を持って始めたことで、
「今月仕事が少ないから、何でもいいから仕事を受けなければ」
という状態にならずに済みました。
この精神的な余裕は、かなり大きかったと思います。
独立して一番難しかったのは「仕事を取ること」だった
独立前には、実務経験もそれなりに積んでいました。
仕事そのものについては、ある程度できる自信もありました。
ところが、独立して気づいたのは、
仕事ができることと、仕事を取れることはまったく別
だということです。
私の独立後の売上は、おおよそ次のように推移しました。
1年目は約150万円。
2年目は約320万円。
3年目は約500万円。
独立してすぐに仕事が次々と入ってきたわけではありません。
むしろ最初の数年間は、
「どうやって仕事を増やせばいいのだろう」
と考えることの方が多かったと思います。
会社員であれば、自分の仕事は会社が用意してくれます。
しかし独立すると、自分の仕事を自分で作らなければなりません。
まず、自分の存在を知ってもらう必要があります。
そして、知ってもらっただけでは仕事にはなりません。
「この人に頼んでみよう」
と思ってもらう必要があります。
独立前の私は、この部分を十分理解していませんでした。
専門知識や実務能力さえあれば、何とかなると思っていたところがあったと思います。
しかし実際には、
専門知識と、仕事を取る力は別物でした。
売上が大きく変わったのは、人とのつながりができてから
仕事の流れが大きく変わったのは、独立して3年目ごろです。
ある税理士さんと親しくなったことをきっかけに、人とのつながりが広がりました。
そこから仕事を紹介してもらう機会が増え、4年目には売上が約1,600万円まで伸びました。
3年目の約500万円から考えると、一気に3倍以上になったことになります。
もちろん、
「税理士と知り合えば仕事が増える」
という話ではありません。
また、誰か一人との出会いだけで売上が増えたわけでもありません。
ただ、この経験から強く感じたのは、
小さな事業では、人とのつながりが思っていた以上に大きい
ということです。
特に専門的な仕事では、
「あの人なら任せても大丈夫だと思う」
という紹介から仕事につながることがあります。
これは広告とは少し違います。
知識だけでもありません。
日ごろの仕事ぶりや人との付き合い方を含めて信用してもらい、その積み重ねが仕事になる。
独立してから、そういう仕事の増え方があることを知りました。
今なら「人前で話す練習をしておけ」と自分に言いたい
今、若いころの自分に一つだけ言えるとしたら、
「人前で話せるようになっておいた方がいいぞ。プレゼンは大事だぞ」
と言います。
私は今でも、人前で話すことは得意ではありません。
だからこそ、もっと若いころから練習しておけばよかったと思っています。
独立すると、自分自身が営業担当でもあります。
自分は何ができるのか。
どんな考え方で仕事をしているのか。
相手にどんなメリットを提供できるのか。
それを自分の言葉で伝えなければなりません。
ここでいうプレゼンとは、何十人もの前で立派な資料を使って話すことだけではありません。
数人の前で、自分の考えを分かりやすく説明する。
初めて会った人に、自分の仕事を短い時間で説明する。
相談を受けたときに、
「私はこう考えます」
と整理して話す。
こうしたことも、すべてプレゼンだと思います。
資格や専門知識は、もちろん大切です。
でも独立すると、
持っている知識を相手に伝える力
も同じくらい大切になります。
独立を考えている人で、人前で話すことが苦手なら、会社員のうちに少しずつ経験しておくことをおすすめします。
売上が増えれば、それですべて成功なのか
独立後、ありがたいことに売上は増えていきました。
しかし、長く仕事を続けていると、別のことも考えるようになります。
それは、
「売上が増えれば増えるほど幸せなのか」
ということです。
仕事を増やせば、当然忙しくなります。
毎月決まった日に必ず行わなければならない仕事をたくさん抱えれば、自分の時間も拘束されます。
お客さんが増えれば、連絡や電話も増えます。
人を雇えば、自分の仕事だけを考えていればいいわけではありません。
会社員時代とは違う種類の責任が増えていきます。
独立前は、とにかく、
「どうやって仕事を取るか」
を考えます。
しかし、ある程度仕事が増えてくると、今度は、
「どの仕事をするのか」
そして、
「どの仕事をしないのか」
を考える必要が出てきます。
これは、私自身も今なお考えていることです。
独立したのに、仕事に追われて自由な時間がまったくなくなってしまった。
それでは、
「自分は何のために独立したのだろう」
ということになりかねません。
独立するなら「どんな生活をしたいか」まで考えておく
独立には大きなメリットがあります。
少なくとも私は、組織の人間関係で悩むことは大きく減りました。
自分で仕事を選ぶ。
自分で判断する。
自分で時間の使い方を決める。
これは会社員時代にはなかった自由です。
一方で、
独立すれば何もかも自由になるわけではありません。
売上を追い続ければ、仕事に縛られます。
固定費を増やせば、毎月その金額を稼がなければならなくなります。
仕事を抱えすぎれば、休みたい日に休めなくなります。
独立するときは、
「年収はいくら欲しいか」
「売上はいくらにしたいか」
を考える人が多いと思います。
もちろん、それも重要です。
ただ、それと同じくらい、
- どのくらい働きたいのか
- 何曜日を休みにしたいのか
- どんな仕事をしたいのか
- どんな仕事はしたくないのか
- 誰と仕事をしたいのか
- 一人で続けたいのか、人を増やしたいのか
といったことも考えておいた方がいいと思います。
売上だけではなく、
自分が送りたい生活から逆算して事業を考える。
独立して長く仕事をするうえでは、その視点が意外と大切です。
固定費は最初から増やしすぎない
独立すると、いろいろなものが必要に見えてきます。
事務所。
パソコン。
プリンター。
電話。
インターネット。
ソフト。
ホームページ。
仕事机。
椅子。
セキュリティ。
バックアップ。
便利そうなサービスも次々と目に入ります。
でも、長く小さな事業を続けて感じるのは、
最初から何もかも完璧に揃える必要はない
ということです。
必要になってから増やせばいいものは、たくさんあります。
特に注意したいのは、毎月料金が発生するものです。
一つ一つは数千円でも、数が増えれば毎月の固定費は大きくなります。
固定費が増えれば、その分、
「毎月これだけは稼がなければならない」
という金額も増えていきます。
独立したばかりのころは、
できるだけ身軽にしておく
くらいでちょうどいいと思います。
もちろん、安ければ何でもいいわけではありません。
パソコンやデータのバックアップなど、故障すると仕事そのものが止まるものには、それなりのお金をかけた方がいい。
一方で、
「あると便利そう」
というだけのものは、実際に必要になってから導入しても遅くありません。
このあたりについては、別の記事で、私が実際に一人・少人数で仕事をする中で、
最初から必要だったもの、後から必要になったもの、なくても困らなかったもの
を整理して書いてみようと思います。
一人で全部抱え込まなくてもいい
独立すると、
「全部自分でやらなければ」
と思いがちです。
私もそういうところがありました。
営業も自分。
経理も自分。
電話も自分。
パソコンの管理も自分。
ホームページも自分。
何かトラブルが起きても、基本的には自分で判断しなければなりません。
一人で仕事をしている以上、ある程度は仕方ありません。
ただ、
何もかも自分でやることが、一人仕事の正解ではありません。
外部の人に頼む。
便利なサービスを使う。
自動化する。
最初からやらないと決める。
こういう選択肢もあります。
重要なのは、
「自分にしかできない仕事に、どれだけ時間を使えるか」
だと思います。
独立後に仕事が増えてくると、この考え方はますます重要になります。
独立後も、働き方は何度でも変えていい
独立前は、
「これからこういう事業をする」
と、一つの形を決めようとします。
でも、実際に何年も続けてみると、最初に考えた形のまま続くことの方が少ないのではないかと思います。
仕事が増える。
人を雇う。
逆に仕事を減らす。
自分でやっていたことを外に出す。
新しいサービスを使う。
やめる仕事を決める。
年齢によっても、生活環境によっても、自分が望む働き方は変わります。
だから私は、
一度独立したら、最初に決めた形を守り続けなければならない
とは思っていません。
むしろ、
「今の自分にとって、この働き方は合っているのか」
を定期的に見直した方がいいと思います。
私自身も、今でも仕事の内容や量、時間の使い方を見直しています。
独立とは、完成された働き方を手に入れることではありません。
自分で働き方を作り直せるようになること
なのかもしれません。
独立は「会社を辞めること」がゴールではない
私は、会社という組織の中で働き続けることにしんどさを感じたことをきっかけに、退職しました。
退職後に資格を取り、独立しました。
最初は思うように仕事を取れませんでした。
その後、人とのつながりをきっかけに仕事が増え、売上も大きく伸びました。
そして長く続けてきた今は、
単に売上を増やすことよりも、
自分がどんな働き方をしたいのか
を以前より考えるようになっています。
これから独立する人に伝えたいのは、
「独立すれば全部うまくいく」
でも、
「独立は危険だからやめておけ」
でもありません。
独立は、
自分の働き方を自分で決めるための一つの手段
だと思います。
だから会社を辞める前に、一度考えてみてください。
自分は何から離れたいのか。
そして、
その代わりに、どんな働き方を手に入れたいのか。
さらに、
仕事が増えたとき、自分はどこまで働きたいのか。
そこまで考えておけば、独立後に仕事がうまくいったときにも、
「何のために独立したのか」
を見失いにくくなると思います。
私自身も、今なお試行錯誤の途中です。
だからこのサイトでは、独立してから実際に必要になったもの、仕事環境、便利だったサービス、失敗したことなども、これから少しずつ書いていきます。
